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「不良証券」底なし連鎖

  • 2008/03/18(火) 20:34:04

サブプライム問題とは 誰がババを持つか分からぬトランプ

◇世界経済は、なぜ揺れている?−−「不良証券」底なし連鎖

米国の低所得者向け高金利住宅ローン(サブプライムローン)問題で、
世界経済が大きく揺れている。
昨年夏以降、世界同時株安が何度となく繰り返され、
震源地の米国は景気後退のふちに立つ。

日本、欧州、それに、これまで高成長が続くとみられてきた
中国、インドも影響を受けずには済みそうにない。

世界に一大事をもたらしたサブプライムローンとは何なのか、
なぜ世界中に影響を及ぼしているのか、を探った。

■発端は住宅ブーム

サブプライムローンは、米国の低所得者や
クレジットカードの返済が滞るような個人を
対象にした住宅ローン。

低所得者の住宅取得を促進するため1980年代に創設された。

所得や資産が多く返済能力の高い優良顧客(プライム層)向けの
「プライムローン」ではない、という意味で
「サブプライムローン」と呼ばれる。

審査が甘く簡単に融資を受けられる分、金利は高い。
年6〜7%程度が一般的なプライム金利に
当初は0・1〜0・6%上乗せして貸し、
2〜3年後には上乗せ金利が3〜6%に跳ね上がる。

そのサブプライムローンが急増したのは03年から。

米景気を支えるため中央銀行が金利を低く抑えたことで、住宅ブームが過熱。
住宅価格(全米平均)は00年から06年までに約2倍に急騰した。

「ローン金利は高いが住宅の値上がりが続けば
低利のローンに借り換えられるから大丈夫」
「返済に行き詰まっても住宅を転売すればお釣りがくる」。

“住宅神話”を背景にサブプライムローンの融資残高は06年末で
1・4兆ドル(約150兆円)と米住宅ローン全体の14%を占めるまでになった。

■証券化で世界中に

本来、サブプライムローンが高金利なのは
焦げ付くリスクが大きいからで、
金融機関もリスクを無視してどんどん貸し込めない。

そのリスクをなくす仕掛けが、住宅ローン債権の証券化だった。

住宅ローン債権を数百〜数千件単位で束ね、
それを小口の証券化商品に仕立て、
国内外の機関投資家や、ヘッジファンド
(富裕層などから資金を集め、株、通貨などで幅広く運用し高収益を狙うファンド)
に売られた。

もちろん、証券化されて投資家の手に渡っても、
住宅ローン債権の焦げ付きリスクは残る。
だが、住宅の値上がりが続き、焦げ付きが低水準だったため
「束ねられた数百〜数千件のローン債権の一部が焦げ付いても
全体の価値は大きく下落しない」という“錯覚”が市場を支配した。

格付け会社は「トリプルA」などの高格付けをサブプライム関連証券に与え
それがまた投資家をサブプライム関連証券に走らせた。

この結果、95年に185億ドルだったサブプライム関連証券の発行額は、
05〜06年には5000億ドル前後に急拡大した。

■焦げつき…市場崩壊

ところが06年後半以降、
金利上昇などを背景に米国の住宅バブルが崩壊し、
サブプライムローンの焦げ付きが急増。

昨夏以降、格付けが一気に引き下げられた
サブプライム関連証券の価格は暴落し、
同証券を保有していた金融機関に巨額損失が発生した。

一方、米シティグループなどは住宅金融会社のサブプライムローン債権を買い取って、
企業向けの貸し出し債権や社債と合成。


表面的にはサブプライムが混じっていることが分からない
証券化商品を世界中の投資家に再販売していた。

このため、「どこの誰がババ(損失の出たサブプライム関連証券)
を持っているか分からないトランプ」(大手銀幹部)のようになり、
サブプライムとはまったく無関係の証券化商品さえ
買い手が付かない混乱が市場に広がっている。


◇最悪のシナリオは?−−米国発、世界同時不況も

サブプライム問題は昨年夏、欧米金融機関の巨額損失が
表面化したことをきっかけに世界金融市場や世界経済を混乱に陥れた。

米国の実体経済も大きく傷ついていることが判明。
米景気後退が現実味を帯び、
世界同時不況という最悪のシナリオもささやかれている。

◆壊れた消費メカニズム

米国の景気後退懸念が高まったのは、
サブプライム問題が国内総生産(GDP)の7割を占める
米個人消費を大きく冷え込ませる懸念があるからだ。

住宅バブル崩壊とサブプライムショックで、
住宅の値上がりを当て込んで買い物をするという
米国型消費社会のメカニズムも壊れ、
低所得者層が消費を増やす余裕はなくなった。

消費低迷=景気失速を見込む企業は雇用や設備投資に慎重となり、
昨年12月の米失業率は2年ぶりの高水準となる5%に跳ね上がった。
サブプライムショックによるニューヨーク株安も米景気後退の懸念を増幅している。

◆日欧直撃…新興国も

世界最大の消費国・米経済の落ち込みは世界経済を変調させる。
日本、欧州企業は対米輸出の落ち込みで打撃を受ける。

輸出主導で「いざなぎ」を超えた戦後最長の日本の景気拡大も息切れし始めた。

中国やインドなどの新興国経済は依然として高成長を続けており、
米国が景気後退に陥っても世界経済は大丈夫、という楽観的な見方もある。

しかし、中国やインドも米国への輸出が成長を支える大きな要素だけに、
米景気失速の影響は免れない。

そんな不安が年明け以降、世界の市場に広がり、
日米欧だけでなくアジアも巻き込んだ世界同時株安を引き起こした。

◆政策総動員の効果は

サブプライム問題のダメージで、米ドルは基軸通貨にもかかわらず、
じりじり値下がりしている。

さらに米国が景気後退に陥れば、
ドル急落=国際金融市場の大混乱さえ起きかねない。

ドル資産から逃避した投機マネーはユーロや円、アジア通貨を急騰させ
日本は円高不況に沈むだろう。

同時に、原油や穀物価格は暴騰し、世界経済は景気後退と
インフレの同時進行(スタグフレーション)
という手に負えない事態に陥る可能性もある。

このため、米政府は現金をばらまいてでも消費を刺激しようと
税金を還付する「戻し減税」など総額1500億ドル(約16兆円)の
緊急経済対策を発表。

並行して金融当局が連続利下げを断行するなど、危機回避に躍起だ。

ただ、巨額のサブプライム損失という不良債権の解決策無しには、
経済対策や利下げも十分な効果は期待できない。

市場では「大手金融機関、モノラインへの資本注入や
サブプライム関連証券の買い上げなど
米政府が公的資金投入に踏み切るかどうかが問題の早期収拾のカギを握る」
との見方が強まっている。

◇金融機関、膨れる損失−−大量の「紙切れ」抱え…日米欧で14兆円

米シティグループ約3兆円、
米メリルリンチ約2兆4000億円−−。

サブプライム関連証券の暴落や証券化商品市場の大崩れで、
米欧金融機関では巨額損失が表面化した。

経営トップが更迭され、中東産油国に資本支援を仰ぐ事態に発展している。
今年3月末で約3950億円の損失が見込まれるみずほフィナンシャルグループなど日本勢も含め、
日米欧の金融機関の損失は14兆円(昨年末時点)とされるが、まだまだ膨らみそうだ。

シティなど米金融大手は証券化のノウハウがない住宅金融会社からも
サブプライム債権を買い込み、
「作ればいくらでも売れる」と、サブプライム関連証券を大量に仕込んだ。

ところが、住宅バブル崩壊が鮮明になった昨夏以降、
これらの証券は全く売れなくなり、時間がたつほど値段は下がるから、
評価損もどんどん膨れ上がる構図になっている。

一方、住宅が値上がりを続けている間は、
サブプライム証券は作って売ってももうかるし、
購入しても高い利回りが得られる有利な金融商品だった。

このため、シティなどは傘下に投資目的の別会社を作り、
本体で組成したサブプライム証券をせっせと買い上げさせていたが、
この「自己増殖」も裏目に出た。

これらの投資会社は投資家から資金を集めて運営していたが、
サブプライムショックで資金が集まらなくなり、
破綻(はたん)を防ぐため本体で丸抱えせざるを得なくなった。

シティの場合、傘下の複数の投資会社が保有する
サブプライム関連資産は約5兆3000億円にのぼり、
その損失処理が本格化するのはこれからだ。

日本の金融機関が損失を抱えた理由は大きく三つに分類できる。

三井住友フィナンシャルグループなど多くは、
資金運用のため米金融機関が作ったサブプライム関連証券を購入、
価格下落でその証券に評価損が出た。

野村ホールディングスやみずほ証券は、
米国で自らサブプライムローンを証券化し販売していたが、
価格下落で売れなくなり損失が膨らんだ。

一方、モノラインを手がけ、その保証で損失を出した損保ジャパンのケースもある。

■ことば

 ◇<1>証券化

 住宅ローン債権などの資産を裏付けに、
銀行などが小口証券を作成して多数の投資家に販売する手法。

調達した資金は新規の投融資に回せる。
ローンの金利収入などから証券購入者(投資家)に金利を支払う代わり、
ローンが焦げ付いた時に背負わなければならないリスクも投資家に分散し転嫁できる。
投資家もリスクはあるが、少ない資金で一定の高利回りを期待できる。

住宅ローン債権の証券化商品のように
多数の個人向けローン債権を一括して証券化したものは、
個々のローンが焦げ付くリスクはあるが、
一度に全部が焦げ付く確率は極めて低い。

このため高い格付けが与えられ、
金融機関は資金調達のためどんどん発行し、
投資家も積極的に購入した。

米証券会社などは住宅ローン債権の証券化商品をベースに、
消費者ローン債権や自動車ローン債権などを加えた証券を合成。


「低リスク・低利回り」「高リスク・高利回り」
など投資家のニーズに合わせ
オーダーメード型の複雑な商品に仕立てて販売している。

 ◇<2>住宅バブルとその崩壊

超低金利と、低所得者の住宅取得促進策として
サブプライムローンなど多様な住宅ローン商品が登場したことを背景に、
米国の住宅価格は04年春から前年比で2けたを超える上昇となった。
消費者は「住宅は値下がりしない」という前提で
多額のローンを組んで住宅を購入。

買った住宅の価格上昇分を担保に新たなローンを組み、
新車や家具などの購入費用に回す形で、米国の消費拡大の原動力にもなった。

ところが、06年後半以降は米金融当局の利上げなどで住宅価格は下落に転じ、状況は一変。
住宅の担保価値は急落し、サブプライムローンの返済延滞が相次ぐ事態となった。

 ◇<3>モノライン

サブプライムローン関連証券など金融商品の元利払いを保証する保険会社。
一般の保険会社が災害や自動車事故などさまざまな保険を扱う
「マルチライン(複数の事業)」なのに対し、
金融保証だけに特化しているため「モノライン(単一の事業)」と呼ばれる。

地方債を出す自治体や証券化商品を発行する金融機関から保証料を受け取り、
債務不履行が生じた場合に元利払いを肩代わりする。

アンバックなど大手4社が9割のシェアを占め、
サブプライム関連など証券化商品の保証残高は06年末で約95兆円に上る。
高リスクのサブプライム関連証券が安全・有利な金融商品として普及した背景には、
モノラインによる保証があった。

しかし、サブプライムショックで元利払いの肩代わりが急増。

大手4社合わせても自己資本が3000億円もない過小資本も災いし、
年明け以降、格付けが大幅に引き下げられた。

モノラインの信用低下は、保証する金融商品の価格下落に拍車をかけ、
金融機関などの損失がさらに膨らむ懸念が高まっている。

毎日新聞 2008年2月2日 東京朝刊

個人破産 〜アメリカ経済がおかしい〜
をNHKが放映したのは2002年のことです。

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